前夜

引っ越し前夜はいつだって明日引っ越しするだなんて信じられない!と生活感アリアリの家の真ん中で悲しくなっている。

8月に引っ越しをした。今回もそうだった。


あとダンボール何個作ればこの作業が終わるのだろうか…はたまた、このまま終わらないのか?と何度も時計を見る。

はぁ?この時計も何でまだココにあるねん。ホンマ信じられへんわ。


ユカと二人、必死に作業を行っていた。と思っていたのは、あたしだけでユカは高いところの荷物を取ってから出しっぱなしの脚立に腰掛けた。

おいおいそんな所に座ってる場合ちゃうでーと思っていたら「夜中にいきなりさいつ空いてるのってLINE〜」とユカがそれのMV的な感じをそれっぽく歌い出した。

うわ〜腹立つな〜と思って見てないフリしていたが「な〜!」「な〜!な〜!」「るなちゃん〜!な〜て!ほら見て!君とはもう3年ぐらい会ってないのにどうしたの〜」とまた歌い出した。

「な〜!見て!ちょうどあってん!脚立が〜だからさ〜あの頃僕たちはさなんでもできる気がしてた〜」脚立に座って体を揺らしながら香水を歌っているユカを見て、もう明日引っ越しなんて無理な事なんだなと諦めかけた。その時、ユカがボリュームを6個ぐらいあげてサビに突入しやがった。

何故、律儀にその歌の頭から歌ったのか?サビからならまだ許せたかもしれない、それに頭から歌いだした癖にサビでちゃんと気持ちよくもなってやがって本当に許せない。

もう引っ越しなんて出来なくてもいいから、今作っているダンボール並びに、作り終えたダンボールもろとも投げつけてやろうかなと思った。

引っ越しには忍耐が必要だ。


千葉市からさいたま市への引っ越しで、さいたまの家で一緒に住む人に「別にええんやけど千葉市に住んでる間に幕張メッセクリープハイプみたかったな」と言ったら「ルナコ〜、今度から俺達さいたま市民だよ?スーパーアリーナがあるじゃん」と言われて、なんだこいつ最高だなと思った。「チケットとれるかなー」と公演が決まっているかの様に心配している。


今一緒に住んでいる人は獣医さんで、本当に毎日尊敬している。

一度「仕事に行くのが怖い」と言っていた事があった。入院している猫の容態が良くなかった様だ。

あたしは猫を長年飼っていて、動物病院に何度も連れて行っていたけど、獣医さんがそんな事を思ったりしてるなんて想像した事も無かった。

それでも、翌朝になれば当然の様に職場に向かう。あたしは怖くなる様な仕事に就いた事がないな。

なんて気楽に生きているんだろうか。


引越してから3ヶ月ぐらい経つけど、無職でずっと家事している。

毎日、こんな事もできないのか?と自分の両手に聞いてみるけど、手には耳ついてないしどうにもなりませんね。

諦めて脚立引っ張りだして香水に限るな。