あいつら

こないだ実家に帰ったときに父・ツネオと母・ヒヨコと三人でモニタリングを見ていた。

LDHの人がファンの人にサプライズで会いにいく!みたいな事がやっていて、ファンの人は泣いて喜んでいた。

あたしは両親に「芸能人誰に会えたらこんなに泣く?」と聞いたら

ヒヨコは少し考えてから「そんなんおらん」と。

ツネオは「高倉健」と。

「死なな会われへんし、死んでも会われへんかもな」と返しながら自分は誰に会ったらあんなに泣けるぐらい感動するんだろうと考えていたら、ヒヨコが「もうルナはあいつらに会ってるもんな」と言った。


想像できないだろうし信じられないだろうから一応言うとくけどヒヨコが言っている「あいつら」とはダウンタウンの事だ。

うちの母ヒヨコはダウンタウンの事を「あいつら」と言うし、浜ちゃんの事は「アイツ」松ちゃんの事も「アイツ」そんなアイツ二人が揃ったら「あいつら」となる。


そう母に言われて心の中で思ったんやけど、会えなくても泣くよな。

松ちゃんの事を地上波のテレビで今度見れた時は泣くよな。

あのモニタリングに出てた実際に好きな芸能人に会えた子達よりテレビの前で号泣すると思う。

 

あたしがダウンタウンと実際に会えたのは奇跡で「4時ですよ~だ」という番組のダウンタウンと遊ぼうというコーナーに弟と一緒に出た。

小学2年になったばかりの頃かな、松ちゃんチームとハイヒールリンゴチームにわかれて色々なゲームをするコーナーで、あたし達は残念ながらリンゴチームだった。


リハーサルの時に浜ちゃんが今起きたみたいな顔であらわれた。

「おなまえは?なんさいですか?」とダルそうに浜ちゃんが聞いてくる。

うわー浜ちゃんやーと思いながら声がちゃんと出たのかも覚えてない。

「本番はココお客さんでいっぱいになるからね」と言われてリハーサルが終わった。

満席の会場よりも本番では松本人志がいるんでしょう。早く松ちゃんにも会いたいな。


本番までめちゃくちゃ狭くて暗い階段の様な所で待っている時間があった。


その階段の先に部屋みたいなのがあって、誰かが出入りするたびに一瞬その部屋の中が見えて、ボブキャッツや130、今ちゃんやひがしのり。それに占いコーナーに出ていた幽霊みたいな風貌でいつも表情をかえる事が一切ないあの「白女さん」が談笑しているのが一瞬見える。

あの扉の中はテレビの裏側だ。


弟と「白女さん笑ってるな」と話した事を覚えている。


しばらくして、もうその部屋の中に入って!って言われて、きっとすごく薄暗い部屋やったんやろうけど眩しすぎて目がつぶれそうで、そこから本番までの記憶がない。


コーナーが始まって、相手チームが浜ちゃんに質問されている時に弟が「お母さんたちどこにおるんやろ?」と話しかけてきて、話しかけ終わる前に「そこ勝手にしゃべるな!」と浜ちゃんから突っ込まれて早くてビックリした。


本番で初めて松ちゃんを見た。

あたし達が出たコーナーは、松ちゃんもリンゴもそれぞれコスプレをして登場する。

番組の最終回も迫っている頃で、そのコーナーは今回で最後というタイミング。

松ちゃんは人気があった「松茸」の仮装で登場した。

あたしも大好きで、うわぁ~今日マッタケやん。松ちゃん最高!と思いながら、キラキラした時間がただ流れていく。


コーナーが終わってしまって裏に誘導される時に松ちゃんが坊主にしたての弟の頭を撫でに来た「きっもちええわ~」と言っていた。あたしも坊主にしてきたら良かった。濃いピンクのバラのヘアゴムしてたけど、あんなもんより坊主!今すぐ刈りたくなった。

 

次のコーナーが始まった。

番組の最終回を盛り上げようというコーナーで最終回に一緒に出る人を決めるオーディションの様なものがコーナーとしてあって、その出場者の一人が退場するときに浜ちゃんの喉元にチョップする一幕があった。

浜ちゃんはセットを蹴って、裏にいたあたし達も首をすくめてしまうぐらいビックリした。

浜ちゃん怒ってるかもと思っていたけど、そのままコーナーは普通に続いていた。

CMに入ったとたん浜ちゃんがものすごい勢いで裏にきて「おい!〇〇!ちょっとこい!お前なめてんか!」と、やっぱり怒っていた。

ただでさえ狭い空間なのに出演者、スタッフがいっきに集まってギュギュの中、怒ってる浜ちゃんを一目見ようと必死に大人達の抜け穴から覗いていた。

もうすぐ〇〇に浜ちゃんが到達してしまいそうになった時にリンゴやったと思うけど「浜ちゃん!もうやめてって!子供も見てるから!」と言ったら、浜ちゃんの動きがとまった。


おい!〇〇!浜ちゃんの事怒らすなよ!と言いたかった。


一方その頃松ちゃんは?と思って後ろを振り返ると

松茸の茶色い全身タイツに赤系のストライプ柄のシャツを羽織って、そのコーナーの合否を決める大きめのベルを持って、ほくそ笑みながら一番後ろに立っていた。

相方が素人に向かって怒り狂い、大人が総出でとめに入っている中、小学2年のあたしよりもより後ろで、ぬりかべの位置に松本人志がいたのだ。


松ちゃん、それでも好きやで。


松ちゃんはほくそ笑みながら小声で「いやいやいやいや」と言っていた。


エンディングの時にステージに出演した人が全員並べられるんやけど、その時も松ちゃんは弟の頭をずっとなでていた。いつも弟の事を恨んでいたけど、あれほど羨ましく妬んだ日はなかった。

松ちゃんは「ありがとうな」と弟に言って去っていった。


弟とW坊主で出る必要があったなと未だに悔やんでいる。


ダウンタウンがいなければあたしの人生は大きく違っていた。

あたしは良い人間ではないけど、まぁまぁ楽しく幸せにやっている。

ダウンタウンがいなければ確実に今の自分と違ってたと思う、出会う人もそこから仲良くなれる人も、全部が違っていたと思えるぐらいの存在で今とっても寂しい。


あたしはダウンタウンが大好きだ。

あいつらが並んでる姿を早く見たいです。

叶いますか?